001) ~あっての
002) ~如何だ/~如何で/~如何によらず
003)~(よ)うが/~(よ)うと/~かろうが/~かろうと
004)*~(よ)うにも~できない/*~に~できない
005)*~限りだ
006)~が最後/~たら最後
007)~かたがた
008)~かたわら
009)~がてら
010)~が早いか
011)~からある/~からする/~からの
012)3 ~嫌いがある
013)~極まる/~極まりない/の極みだ
014)~如し/~如く/~如き
015)*~ことだから/~こととて/~こともあって
016)*~ことなく/~ことなしに/~ことなくして~ない
017)~始末だ
018)~ずくめ
019)*~ないではおかない/*~ずにはおかない
020)~ないでは済まない/~ずには済まない/~なしでは済まない
021)*~さえ/~すら
022)~そばから
023)*~だけでなく~も/* ~のみならず~も
024)~た‐ところで~ない
025)~だに
026) ~たりとも~ない
027)~たる者/~ともあろう者が/~としたことが
028)~つ~つ
029)~っ放し
030)~であれ/~であろうと
031)~てからというもの/ここ~というもの
032)~でなくてなんだろう/~と言わずしてなんだろう
033)~ではあるまいし/~ではあるまいに
034)~てやまない/~てやまぬ
035) ~と相まって
036)~とあって/~とある
037)~といい~といい/~といわず~といわず
038)~というところだ/~といったところだ
039)~と言えど(も)
040)*~と言ったら/~ったら/~ったらありゃしない
041) *~かと思うと/*~かと思いきや/~かと見ると
042)~ときたら/~ときては/~ときている
043)*~ところに/*~ところを
044)Aとしたところで/としたって/にしたとことで/にしたってB
045)~というのは/~とは ・
046)*~とは言え/*~とは言っても/~とは言うものの
047)~と言わんばかり/~とばかり
048)~と(も)なく/~と(も)なしに
049)~と(も)なると/~と(も)なっては
050)*~ないではおかない/*~ずにはおかない
001) ~あっての
名詞: × + (が)あっての + 名詞
【会話】
部長:ありがとう。今回の受注は君たちのおかげだ。なんと言っても、仕事あっての会社だからな。
山田:いいえ、部長の御指導のたまものです。
部長:いやいや、そんなことはない。みんなの協力あっての成功だ。「チームワークこそ成功の鍵だ」と改めて教えられたよ。ありがとう、みんな。
【解説】
「~あってのN」は「~があって、はじめて可能な N」という意味を表します。前の条件がなければ、後ろの結果も成立しないという前提条件を表す点で、「~て、はじめて/~て、こそ」(→文型192)、「~ば、こそ」(→文型050)と基本的には同じ意味になります。
みんなの協力 あっての 成功だ。
があってこその
があればこその
【例文】
1.この度の優勝は、みんなの団結あってのものだ。
2.私が仕事に専念できるのも、全て妻の内助があってのことです。
3.彼女が会社を辞めたのは、きっと何かわけがあってのことだろう。
4.そりゃあ、お金も欲しいけど、「命あっての物種」って言うじゃないか。
5.お客あっての商いだということを忘れてはいけない。
【例題】
1) ○○先生(あるからの/あっての)私です。(お/ご)恩は(いつも/いつまでも)忘れません。
2) 専務があなたをこのパーティ( )招待した( )は、きっと何か考えがあって( )ことですよ。
002) ~如何だ/~如何で/~如何によらず
名詞: × + (の)如何だ ①
(の)如何で
(の)如何によって
名詞: × + (の)如何にかかわらず ②
(の)如何によらず
【会話】
小孫:模擬試験の結果の如何によらず、志望校を受験したいんですが、間に合うでしょうか。
先生:君のこれからの努力如何で決まる思うよ。まだ、2ヵ月以上もあるからね。
小孫:ということは、可能性があるということですね。最善を尽くしてみます。
【解説】
「如何」は「どうであるか」を意味する漢語で、根拠を示す助詞の「~で/~によって」と結びつくと「~ かどうかによって決まる」という意味を表し、「~に関係なく」を意味する「~にかかわらず」(→文型293)、「~によらず(→文型349)」や「~を問わず」(→文型472)」と結びつくと「 ~がどうかに関係なく~」という意味を表すようになります。
この「如何」は例文中のもののほかにも慣用句がいくつかありますから、一緒に覚えた方がいいでしょう。
如何せん:如何せん、もはや救う手段がない。
如何ともしがたい:こうなっては如何ともしがたい。
如何にかかっている:成功するかどうかは、努力如何にかっている。
【例文】
1.その会社に就職するかどうかは、給料如何ですねえ。
2.酒というのは飲み方如何で、毒にもなり薬にもなる。
3.今後の君の態度如何では、懲戒解雇もあり得ることを忘れるな。
4.理由の如何を問わず(⇔如何によらず/如何にかかわらず)、暴力はよくない
5.今更そんなことを言われても、もう、手遅れだ。如何ともしがたいよ。
【例題】
1) 勝敗(が/の)如何(によって/にかかわらず)、両チームの健闘は讃えられる(はず/べき)だろう。
2) 業績如何( )降職も(ある→ )得る人事制度が企業に(導入される→ )始めた。
003)~(よ)うが/~(よ)うと/~かろうが/~かろうと
名詞 :だろう/であろう + と
動詞 :未然形<~(よ)う> が
イ形容詞:<ー[い]→かろう>
ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう>
(注:動詞の「ない形」はイ形容詞と同じく「~なかろう」になる)
【会話】
良子:あなた、この小平の学校の成績を見てよ。小平ったら、野球ばかりにかまけて、この始末よ。
李 :多少成績が悪かろうと、元気でのびのび育ってくれた方いいじゃないか。
良子:あなたがそんなに甘いから、私がいくら口を酸っぱくして叱ろうと、小平は勉強しようとしないのよ。
【解説】
動詞や形容詞の未然形と「が/と」が結びついた形で、「~ても、関係なく~」を表します。まず未然形の作り方を復習しましょう。動詞:行く→行こう/食べる→食べよう
する→しよう/来る→来ようイ形:美しい→美しかろうナ形:元気だ→元気だろう/元気であろう名詞:雨だ→雨だろう/雨であろう
この文型は前件と無関係を強調する逆説の「~ても」なので、次のような用例では使えません。その点、「~ても」はどんな場合でも使えます。
歩いて行っても(×行こうが)、十分で着く。
【例文】
1.何があろうと、決して驚いてはいけないよ。
2.人に何と言われようが、気にすることはない。
3.どんなに高かろうと、どうしても手に入れたいんだ。
4.私が誰と結婚しようが、あなたにとやかく言われる筋合いはないわ。
5.何をしようと君の自由だが、僕の邪魔だけはしないでくれ。
【例題】
1) どんなに時代が(変わる/変わろう)と、どんなに世界が(変わる/変わろう)と、人の心は(変えない/変わらない)。喜びに悲しみに、今日もみんな生きている。 (テレビドラマ「水戸黄門」の主題歌)
2) 僕は少しぐらい部屋( )(汚い→ )が、あまり(気になる→ )方なんだ。
~(よ)うが~まいが/~(よ)うと~まいと
名詞 :だろう/であろう + と~まいと
動詞 :未然形<~(よ)う> と~(よ)うと
イ形容詞:<ー[い]→かろう> が~まいが
ナ形容詞:<ー[な]→だろう/であろう> が~(よ)うが
【会話】
李 :おい、あそこで若い女性が、やくざ風の男に絡まれてるぞ。二人で行って助けてやらないか。
山田:馬鹿言うなよ。命あっての物種だよ。笑われようが軽蔑されようが、「君子危うきに近寄らず」だ。
李 :あらら、あいつ薄情な男だなあ。すたこらさっさと逃げちゃったよ。逃げ足の早いこと!待ってくれ~っ。
【解説】
「~(よ)うが~(よ)うが/~(よ)うが~まいが」など、これらの文型はどれも「前件(A、B )とは関係なく、後件が成立する」という意味を表します。「~(よ)うが/~(よ)うと」(→文型437)から作られた文型なので、「~ても~ても、関係なく/~ても~なくても、関係なく~」と無関係を強調します。
注意するのはAの場合もBの場合も成立することを表す「AにしろBにしろ/AにせよBにせよ」(→文型319)との違いですが、意味の違いが、用法の違いを生むことがあります。
行こうが行くまいが(・行くにせよ行かないにせよ)、参加費はもらうよ。
結婚しようとすまいと(×結婚するにせよしないにせよ)、私の自由よ。
【例文】
1.あんな奴、死のうが生きようが、俺の知ったことか!
2.大地震があろうがなかろうが、備えあれば憂いなしだ。
3.まあ彼はいようがいまいがあまり関係ない、いわば会社でも影の薄い存在です。
4.たとえ救出が困難であろうと危険であろうと、敵軍に包囲された自軍を見殺しにはできない。
5.ごろごろ寝ていようと、ぶらぶらしていようと、休みの日ぐらい俺の自由にさせてくれ。
【例題】
1) 彼はビールで(ある/あろう)が、焼酎で(ある/あろう)が、酒と名のつくもの(に/で)は目がない。
2) 人に(笑われる→ )と(嘲られる→ )と気にはしない。僕は信じる道をただ進む( )( )だ。
004)*~(よ)うにも~できない/*~に~できない
動詞:未然形 <~(よ)う> + にも + 動詞:ない形
動詞: 原形 + に + 動詞:ない形
(注:これらの文型はほとんど文末で可能形の否定と呼応する)
【会話】
李 :あんなに我も我もと自説を主張していては、新機軸を打ち出そうにも打ち出せないよ。「船頭多くして船山に登る」だよ。あれじゃ、単なる意地の張り合いだね。
山田:もう止めようにも止められないよ。
李 :でも、傷口が広がらないうちに止めないと、みんな引くに引けなくなり、チームが分解しちゃうよ。
【解説】
「~(よ)うにも~(でき)ない」は「~しようと試みても~(でき)ない」、「~に~(でき)ない」は何か周りの事情があってできない、「~たくても~(でき)ない」は望んでもできないと、少しずつ意味は違いますが、類義文型になります。
買おうにも買えない。 <意志>
買うに買えない。 <事情>
買いたくても買えない。<希望>
なお、「言うに言われぬ/見るに見かねて/泣くに泣けない」などは慣用表現なのでそのまま語彙として覚えましょう。
【例文】
1.進むに進めず、退くに退けず、まさに進退に窮した。
2.もう逃げようにも逃げられぬ「まな板の鯉」だ。
3.こんな小さなミスで全プランが頓挫するなんて、泣くに泣けない思いです。
4.この辞典が完成するまでには、言うに言われぬ苦労がありました。
5.痛くもない腹を探られたが、弁明しようにもその機会も与えられず、断腸の思いだった。
【例題】
1) 最近疲れが(ひどくて/ひどいから)、今朝は(起きる/起きたい)に(起きなかった/起きられなかった)。
2) 彼の行き先が(わからない→ )、連絡を(取る→ )にも(取る→ )ようがなかった。
005)*~限りだ
数詞・名詞: × + 限りだ ①
限りで
感情形容詞:連体形<ーい/ーな> + 限りだ ②
【会話】
李 :田中教授の家は箱根に別荘があって、夏休みは家族そろって、そこで過ごすんだって。
良子:羨ましい限りだわ。お金って、ある所にはあるものね。「金は天下の回りもの」って言うけれど・・・。
李 :僕たちの所には回ってこないね。あ~あ、夏の休暇も今週限りだけど、どこにも行けそうにないなあ。
【解説】
「~限りだ」は日時について「~までだ」<期限>、数量について「~だけだ」<限定>を表します。「限り」は名詞なので、「限りで~/限りの<名詞>」の形も使われます。
また、「~限りだ」は感情形容詞につくと、「非常に~だ」という程度表現になります。多くの類義表現がありますが、代表的なものを挙げると、名詞に直接接続する「~極まる/~の極みだ/~極まりない」(→文型069)や、「~と言ったらない/(→文型219)」、「~のなんのって」(→文型358)や「~てたまらない/~てしかたがない」(→文型183)などです。
苦しい限りだ。
苦しいのなんのって。
苦しいと言ったらなかった。
苦しくてたまらない。
【例文】
1.この資料の貸し出しは、三日間限りです。
2.今日限りで、皆さんともお別れです。色々お世話になりました。
3.君と10年ぶりに再会できて、うれしい限りだ。
4.あんな奴に負けたなんて、くやしい限りだ。
5.根も葉もない噂をたてられ、腹立たしい限りだ。
【例題】
1) 一夜(限り/限って)の恋の(つもり/わけ)だったが、(いつしか/いつか)僕たちは深い仲へと発展し(ていった/てきた)。
2) 娘が(嫁ぐ→ )からというもの、わが家はまるで火( )消えた(ようだ→ )静まり返り、寂 しい限りです。
006)~が最後/~たら最後
これ・それ・あれ: × + が最後
動詞 :た形(希に原形)
動詞 :た形 + ら最後
【会話】
佐藤:アメリカに2、3年行かないかって言われて、迷ってるんだ。行ったが最後、しばらく帰してもらえない気がしてね。
真理:出世コースじゃないの。このチャンスを逃したら最後、二度と回って来ないわよ。
佐藤:君も一緒に行ってくれないか?どう?
【解説】
「~が最後/~たら最後」は「~が最後で、もう終わりだ」など、絶望的な結果になることを表します。文末で可能形の否定(「~できない/~(ら)れない」)が多く現れます。
類義文型に後件で悪い結果が発生することを強調する仮定表現「~(よ)うものなら」(→文型448)がありますが、「~が最後/~たら最後」は確定事実であることが強調されていて、「もし/もしも/万一」といっしょに使えません。しかし、「もし~(よ)うものなら」は成立します。→例題1)
そんなことを 言ったが最後、 この国では刑務所行きだ。
言ったら最後、
言おうものなら、
【例文】
1.あの男はこの業界の顔役で、彼ににらまれたら最後だ。
2.今度の仕事は少しでもミスをしたが最後、取り返しがつかないことになる。
3.彼は言い出したら最後、一歩も後へ引かない。
4.あいつはマイクを握ったが最後、離そうとしないカラオケ狂だ。
5.あんな女につかまったら最後、骨の髄までしゃぶられてしまうぞ。
【例題】
1) 万一大地震でも(起ころう/起こった)(が最後/ものなら)、この地域は地盤沈没の(嫌い/恐れ)がある。
2) 一旦(落後する→ )が最後、なかなか(はう→ )上がれない( )がこの競争社会だ。
007)~かたがた
名詞: × + かたがた
【会話】
山田:打ち合わせを早めに切り上げて、工場見学かたがたお花見に行かないか。夕日を浴びながらのお花見。たまにはのんびりしようじゃないか。
佐藤:おやおや、お花見かたがたの工場見学と言った方が正確じゃないの?困った方々だなあ。
山田:行きたいなら、がたがた言わないこと!
【解説】
「~かたがた」は「AかたがたB」の形をとり、同一主語文で使われ、同一時間帯のなかで「Aをする機会を使って、Bをする」並行動作を表します。丁寧な語感なので、手紙や公式の会話で多く使われます。同義表現に「~がてら」(→文型038)があり、こちらは日常会話で 多く使われます。どちらも動作Aが主で動作Bが従の関係にあります。
散歩かたがた(・がてら)、話しましょう。
「AついでにB」(→文型163)も似た意味を表しますが、Bは付け足しの行為で異なる時間帯の動作です。→例題1)
【例文】
1.夕涼みかたがた、図書館に寄ってみた。
2.墓参りかたがた、幼友だちに会って来ようと思う。
3.お願いかたがた、近況御報告まで。 敬具
4.近くに来るついでがございましたので、先日のお礼かたがた、お伺いしました。
5.上海出張かたがた、足を伸ばして黄山に登ってきた。
【例題】
1) 近日中に(お/ご)挨拶(のついでに/かたがた)、(お /ご)伺い(になりたい/したい)と思っ(ております/ていらっしゃいます)。
2) お寺参り( )かたがた、浅草へ(遊ぶ→ )に(行く→ )みませんか。
008)~かたわら
名詞: の + かたわら
動詞:原形
【会話】
課長:新聞でも紹介されていたけど、田中さんは仕事のかたわら、自治会の会長としても地域で大活躍だね。李 :奥さんも、中国帰国者に日本語を教えているボランティアグループのリーダーらしいです。
課長:有能な男のかたわらに良妻ありというところだな。君も地域活動で中国語を活かしてみたら?
【解説】
「AかたわらB」は「Aする一方でBする」とほぼ同義表現ですが、動作Aと動作Bは異なる時間帯で行われ、しかも習慣的な行為に用いることが多いでしょう。この点がAとBが同一時間帯で行われる並行動作を表す「~ながら」(→文型269)と異なっています。→例題1)
歩きながら(×かたわら)タバコを吸う。
その他、「かたわら」には会話中の「男の傍(かたわ)ら」や「母が料理を作るかたわらで、子供たちが遊んでいる」のように「側」という場所も表します。
【例文】
1.彼は会社に勤めるかたわら、英語学校で勉強している。
2.A社は不動産業のかたわら、飲食店も経営している。
3.あの人は農業のかたわら、農閑期は演奏活動もしているシンガー・ソング・ライターよ。
4.あいつは嫌な奴だ。本人の前では胡麻をするかたわら、裏で陰口をたたいている。
5.子育てのかたわら書きつづった随筆が、ベストセラーになった。
【例題】
1) 休日(ぐらい/ほど)は、音楽でも(聴きながら/聴くかたわら)、のんびり過ごしたい(こと/もの)だ。
2) 留学生の(多い→ )は大学( )通うかたわら、学費を稼ぐ( )( )にアルバイトもしている。
009)~がてら
名詞: × + がてら
動詞:[ます]形
李 :夕涼みがてら、井の頭公園でも散歩しないか。
【会話】
良子:男の人って優雅でいいわねえ。女の私はどこへ行くにも買い物がてらよ。
李 :わかった、わかった。ついでに吉祥寺の街に出て、夕食の材料も買って来よう。荷物は僕が持つからさ。
良子:ねえ、夏物の服も買っていいかしら?
【解説】
「~がてら」は「Aをしている時間を使って、Bをする」と言う意味を表す表現で、同一時間帯のなかで、主たる動作Aに並行して、従たる動作Bをすることを表現します。
また、同義表現の「~かたがた」(→文型035)、「~ついでに」(→文型163)も併せて参照してください。なお、このふたつの文型は同時並行動作は表せません。
散歩がてら(・かたがた/・ のついでに)本屋に寄る。
散歩がてら(・かたがた/×のついでに)話をしよう。
【例文】
1.神社のお祭りを見物がてら、夜店でものぞいてこようよ。
2.中国旅行がてら、教え子に会って来ようかと思う。
3.私は毎朝この道をジョギングがてら、思い浮かんだことを俳句にしている。
4.市場調査がてら都内の繁華街を冷やかして歩くのが、まあ、私の道楽のようなものです。
5.料理を作りがてら、聞くともなく聞いていたラジオから、 懐かしい歌が流れてきた。
【例題】
1) A君は病気療養中との(こと/もの)だから、見舞い(ながら/がてら)、家に寄って(みる/みよう)よ。
2) (散歩する→ )がてら、古本屋に(寄る→ )、本を数冊(買う→ )来た。
010)~が早いか
動詞:原形 + が早いか
【会話】
李 :小平のしつけがなってないなあ。座るが早いか、「いただきます」も言わないで夕食に食らいついたぞ。
良子:あなたって家に帰ってくるが早いか私に小言ですか。あなたにも半分は責任があるのよ。
李 :坊主、雲行きが怪しいと思ったのか、食事が終わるが早いか逃げ出していったよ。
【解説】
「~が早いか」は「~すると、すぐ~」を意味します。「~が早いか」は動作の同時発生を強調する点に特徴があり、以下のような自然現象や状態発生に使うと不自然になります。また、現実に起こった既定事実描写なので、後件で「~たい・~つもりだ・~だろう」などの意志・推量表現は使えません。→例題1)
家に帰るか帰らないうちに(?帰るが早いか)、雨が降りだした。
帰ったとたんに(×帰るが早いか)、涙が出てきた。
同義表現は多くありますから、「~か~ないかのうちに」(→ 文型042)の項を参照してください。
【例文】
1.ベルが鳴るが早いか、彼は教室を飛び出した。
2.彼女は卒業するが早いか、結婚してしまった。
3.バスが着くが早いか、乗客は先を競って乗り込んだ。
4.主人の足音を聞くが早いか、子犬は駆け寄ってきた。
5.店が開くが早いか、お客はバーゲン会場に殺到した。
【例題】
1) (まもなく/ただちに)取引先からの電話がある(はず/つもり)なので、(入ったとたんに/入り次第/入るが早いか)、(まもなく/ただちに)教えてください。
2) 隊員たちは「○○地区で火事が発生!」( )の連絡を受けるが早いか、消防車に(乗る→ )込み、現場( )と急いだ。
011)~からある/~からする/~からの
数詞: × + からある からする からの + 名詞
【会話】
山田:例の他社から引き抜かれて来た彼、懸案だった○○物産を見事に開拓しちゃったよ。やはり凄腕だよ。
李 :「営業の鬼」と言われる人物だけあるねえ。今まで10人からの営業が当たっても無理だったのにねえ。
山田:その報賞として、社長から金一封と50万円からする時計をもらったそうだ。
【解説】
これらの文型の用法は「~を越える~」「~以上ある~」という意味を表します。話者とって数量がとても多いと感じられるとき使われる文型で、距離・重量・高さなどには「~からある」、金額には「~からする」、人数には「~からの人」が使われます。
例えば実際は二万円でも、その数量をどう感じるかで表現は異なります。
二万円ぽっちの時計 <その時計をとても安いと感じている>
二万円しかない時計 <その時計を安いと感じている>
二万円ばかりする時計<その時計を少し高いと感じている>
二万円からする時計 <その時計をとても高いと感じている>
【例文】
1.彼は50キロからあるバーベルを軽々と持ち上げた。
2.この骨董品は明代の物で、買うとなると50万円からします。
3.この前の地震では、二万人からの人々が家を失い、五千人からの人が死にました。
4.この湖は、深いところは三百メートルからあります。
5.数名しか採用しない会社の社員募集に、五百人からの人が応募した。
【例題】
1) 二億円から(ある/する)絵画をぽんと買っていく(なんか/なんて)、一体どんな人なん(だい/かい)?
2) 日本人が中学まで( )習う教育漢字だけで881字からある。非漢字圏の学生たちから、とても(覚える→ )切れないという悲鳴( )聞こえてくる。
012)3 ~嫌いがある
名詞: の + 嫌いがある
動詞:原形/ない形
【会話】
李 :深刻な顔して、何を考え込んでいるんだい?
良子:妹にいい就職先が見つかるかどうか心配で・・・。
李 :まだ、五月だよ。一年も先の事じゃないか。「来年のことを言うと鬼が笑う」ってさ。
良子:あなたは現実を甘く見る嫌いがあるわね。もう会社まわりしてるクラスメートもいるのよ。
【解説】
「~嫌いがある」は「~という良くない傾向がある」という意味を表します。ほとんどは人が主語の文ですが、仮にもの・ことが主語になるときも背後に人の責任が存在している場合に使われます。ですから自然現象や、単に回数が多いことを表すときは使われません。その点、同義語に「~がちだ」(→文型037)は、回数・傾向・自然現象まで広範に使えます。どちらも「ともすれば/よく/しばしば」などの副詞と呼応することが多いので、一緒に覚えておきましょう。→例題1)
年の暮れは交通事故が多発しがちだ(・多発する嫌いがある)。
明日の天気は曇りがちになる(×曇る嫌いがある)。
【例文】
1.この消費社会は、物を使い捨てにする嫌いがある。
2.彼は協調性はあるが、決断力に欠ける嫌いがある。
3.最近の小説は、内容が浅薄な嫌いがある。(「ナ形」の例)
4.どうも彼は結論だけ言って、丁寧に説明しようとしない嫌いがあるようだ。
5.若者は、その理想主義から、ともすれば過激な行動に走る嫌いがある。
【例題】
1) 君は(もしかすると/ともすると)、独断専行に走り(がちだ/嫌いがある)から、もっと周りに気を配る(ように/みたいに)心がけた方がいい。
2) 日本の企業( )は学歴偏重( )嫌いがあるが、これでは国際競争に(生き残れる→ )まい。
013)~極まる/~極まりない/の極みだ
名詞・名詞句: × + 極まる
ナ形容詞 : × 極まりない
の極みだ
【会話】
李 :小学校の同窓会の折りに、6年の時の担任の先生が感極まって泣き出してね。
良子:先生に昔のお礼をちゃんとしたの。カラオケに夢中だったら、失礼極まりないわよ。
李 :そんなことするはずないだろ。先生が僕のことよく覚えてくれていて感激の極みだったよ。
【解説】
この三つの表現は形は違っていますが、どれも程度が極度であることを表す点で共通です。漢語名詞やナ形容詞の語幹と結びつくことがほとんどで、いいことにも悪いことにも使われます。同義表現に「名詞+の至りだ」(→文型355)がありますが、いいことに使われます。しかし、どちらも文章語ですから、特に改まった場での会話でない限り、口語として使われることはほとんどありません。
【例文】
1.酒・麻雀・女遊びと、君の生活は不健康極まりない。
2.どうして自殺なんて!そんなに苦しんでいたのなら、なぜ一言、僕に話してくれなかったのかと、残念極まる。
3.テレビはつけっぱなし電気もつけっぱなし、不経済極まる。
4.不眠不休で子供を看護をした母も、とうとう疲労の極みに達した。
5.女性一人で、真夜中に見知らぬ外国の街を出歩くなんて、危険極まりないことだ。
【例題】
1) 目上の人(について/に対して)「さん」づけもしないで呼び捨てにする(なんか/なんて)、無礼の(極まる/極みだ)。
2) 老人を食い物( )する霊感商法の手口は、詐欺そのもの( )。(卑劣だ→ )極まりない。
014)~如し/~如く/~如き
名詞・副詞:の /が + 如し
動詞 :普通形 如き + 名詞
如く + 動詞・形容詞
【会話】
李 :今度の日曜、結婚記念日だよね。もう十年か、「光陰、矢の如し」とはよく言ったものだ。
良子:色々なことがあったけれど、楽しいことばかり思い出すわ。小平が生まれて生き甲斐もできたし。
李 :僕は何から何までないないずくしだった、あの二人だけの新婚の頃を今更の如く思い出すなあ。
【解説】
「~如し」は現代語の「~ようだ」に相当する古語ですが、用法的には慣用的なものに限られています。接続も例文4のように動詞に「が」をつけて用いられることもあります。会話や作文では「ようだ」を使えば十分でしょう。
速きこと風の如し(如し・ようだ)
風の如く速し (如く・ように)
風の如き速さ (如き・ような)
なお、例文2のように人称を表す語と接続するときは、「あいつら如き/田中如き」のように「~如き(者)が/如き(者)に」のように「者/人間」が省略されることもあります。→例題1)
【例文】
1.その男は鬼の如き形相で、私をにらみつけた。
2.あいつら如き駆け出しの若造に負けてなるものか。
3.その娘は蝶の如く軽やかに、花の如くあでやかに舞った。
4.彼は眠るが如くやすらかに、最期の時を迎えた。
5.今まで述べてきた如く、今回のことにつきましては、当社は無関係でございます。
【例題】
1) 彼はお前(如き/如く)が(勝つ/勝てる)相手ではない。今彼と闘うのは、むざむざ(死ぬ/死に)に行くようなものだ。
2) 今回の作戦の失敗は起こるべくして起こったと(言う→ )。当初から指摘されていた(如し→ )、この作戦にはそもそも無理が(ある→ )のだ。
015)*~ことだから/~こととて/~こともあって
名詞 : の + ことだから
動詞・形容詞:普通形<ナ形ーな> ことだし
こととて
こともあって
【会話】
良子:小平がお隣の柿を盗み食いしたらしいの。お隣さんも子供がやったことだし、大目に見てくれたけど、恥ずかしいと言ったらありゃしないわ。
李 :僕も子供の頃に似たような経験をしていることもあって、注意しにくいなあ。
良子:蛙の子は蛙っていうわけね。
【解説】
どれも原因・理由の表現で、「他でもない~<ひと・こと・もの>だから」とそれ自身が持っている固有の理由を取り上げることに特徴があります。「なにしろ/なにせ~(ことだ)から」と副詞と一緒に使うといいでしょう。
「~ことだから」は話し言葉で多く使われ、「~こととて」は手紙や書き言葉で多く使われると言う違いはありますが、例文1~4のように同じように使えます。なお、「~こともあって」は「~て」系の理由表現(→資料、)なので、文末で意志・推量表現が使えないという制約があります。
注意しなければならないのは、「~こととて」には例文5のように「~ことであっても」と逆説条件の用法があることで、この場合、「~ことだから/~ことだし/~こともあって」は使えません。
【例文】
1.慣れぬこととて時間ばかりがかかり、少しもはかどらない。
2.何しろ一刻を争う時のことだったから、上司の判断を待っている余裕はなかったんです。
3.病弱なこともあって、少年は読書を友として育った。
4.天候も不順なことですし、くれぐれもお体にお気をつけください。
5.いくら子供がやったこととて(×ことだから)、謝って済まないこともある。
【例題】
1) 社長不在の(ことだし/こととて)、この件については日を改めてご返事(して/させて)(いただき/いただけ)ませんか。
2) 遅刻常習犯の彼の( )( )だから、今日も(遅れる→ )来る( )決まっている。
016)*~ことなく/~ことなしに/~ことなくして~ない
動詞:原形 + こと(も)なく
ことなしに
ことなくして ~ ない
【会話】
山田:よく「万里の長城を見ることなくして、中国を見たと言うなかれ」って言われるね。
李 :そんなことで、中国を見たことにはならないよ。
山田:どういう意味?
李 :広大な内陸部の農村地帯を見ることなしに、中国も中国の抱える悩みも見えないってことさ。
【解説】
「~ことなく」は「~しないで~する」、「~ことなしに」は「~しない状態で~する」という意味を表します。置き換えが可能な場合が多いのですが、「~ことなく」は「~ことなしに」より広範に使えます。
箸を使うことなく(?ことなしに)、スプーンで食べた。
ご飯を食べることなく(・ことなしに)、学校へ行った。
「~ことなくして~ない」は常に文末で否定形(「ない」形)や否定を意味する語と呼応し、「~しなければ、~決して~ない」という意味を表します。例えば、例題1)も「~ことなくして」を使うと、後件は「社会を変えていくことは不可能だ」となります。
【例文】
1.彼は雨の日も風の日も、休むことなく働き続けた。
2.相手の心を傷つけることなしに、間違いを正すことは難しいことだ。
3.原則を変えることなく、現実に柔軟に対応することが大切だ。
4.犠牲を払うことなくして勝利を得ることは不可能だ。
5.額に汗して働くことなしに手に入れた泡銭は、身に付かぬものだ。
【例題】
1) 暴力(による/に基づく)こと(なしに/ないで/なくしては)、社会を変え(てくる/ていく)ことは可能だ。
2) 心( )( )お二人の前途を祝福いたします。いつ( )( )も変わること( )( )お幸せに。
017)~始末だ
こ・そ・あ:この/こんな + 始末だ
動詞 :原形/ない形
【会話】
係長:息子にもう少し根性があるといいんだがな。一時間も勉強しないうちに、居眠りを始める始末でね。
李 :うちの子供にも呆れます。忘れ物を注意すれば、今度は落とし物をする始末です。
係長:あっ、しまった!僕も会社に大事な書類を忘れてきた。大人も子供のことは言えないなあ。おーい、お勘定!
【解説】
「始末」という名詞は、例文1のように「処理」、例文2のように「(よくない結果に至った)事情・経過」という意味を表しています。
そこから、「~始末だ」という文型が生まれますが、例文3~5のように「こ・そ・あ」や動詞について「~というよくない結果や事態になった」という意味を表します。後件でいい結果になったことが表せませんから、注意しましょう。
○受ける大学の全てに不合格になる始末だ。
×努力して○○大学に合格する始末だ。
【例文】
1.お前は自分のやったことの始末も自分でできないのか。全く始末に負えない奴だ。
2.ことの始末は、今まで述べたとおりです。
3.何だ、この始末は!一体、自分の責任をどうとる気だ。
4.あの二人は犬猿の仲で、ちょっとしたことでも、すぐ口論になる始末だ。
5.借金に借金を重ねたあげく、ついには夜逃げまでしでかす始末だ。
【例題】
1) お宅のお嬢さん(に/で)は手を焼いています。いつも男の子を殴っ(て/ては)(泣く/泣かせる)始末です。
2) 最近( )は、遊ぶ金(ほしい→ )に、売春( )走る女子中学生まで出る始末だ。
018)~ずくめ
名詞 : × + ずくめ
一部の「ナ形」:<ナ形ー×>
【会話】
李 :彼の話はいつも結構ずくめだが、どこまで信用できることやら。彼と一緒に出張してどうだった?
山田:彼のことは別にして、充実した一週間だったよ。仕事の外に、従弟の結婚式に出席できたし・・・。
佐藤:結婚式と言えば、あの黒ずくめの集団は異様だよね。前から来ると、思わず道をあけるよ。
【解説】
「~ずくめ」は「全て~ばかりだ/全て~一色だ」を表す接尾語で、良いことにも良くないことにも使われます。注意してほしいのは類義語の「だらけ」(→文型155)との違いです。
間違いだらけの作文
間違いずくめの作文
「だらけ」は「間違いがが普通以上にたくさんある」こと、「ずくめ」は「最初から最後まで、全てまちがいばかり」という点にあるでしょう。→例題1)
また、「だらけ」は常に良くないことに使われますから、「楽しいことだらけ/幸せだらけ」という表現はありません。しかし、「~ずくめ」を使って「楽しいことずくめ/幸せずくめ」と言うことができます。
【例文】
1.この学校は規則ずくめで、窮屈でしかたがない。
2.楽しいことずくめの毎日なんて、あるはずがないだろ。
3.幸せずくめに見えた彼女にも、人知れぬ悩みがあったんだね。
4.昇進したし、子供も生まれたし、今年はいいことずくめだった。
5.社長の話は、最初から最後まで小言ずくめで、もう聞いててうんざりしたよ。
【例題】
1) (この/こんな)誤字(だらけ/ずくめ)の作文を書いて、君、(恥ずかしい/恥ずかしくない)かい?
2) このところ、何をやっても(失敗→ )ずくめ( )、自分が嫌に(なる→ )ちゃうよ。
019)*~ないではおかない/*~ずにはおかない
動詞:[ない]形 + ないではおかない
ずにはおかない
【会話】
良子:お隣の奥さんって凄いわよ。小二の子どもを毎晩十時まで勉強させないではおかないらしいのよ。
李 :お前だって大したものさ。毎晩疲れて帰って来る俺に、家事を手伝わせずにはおかないじやないか。
良子:もしそんなことを外で言ったら、ただじゃおかないわよ。帰って来る家はないと思いなさい。
【解説】
「~ないではおかない/~ずにはおかない」は動作動詞に付くと、例文1、2のように「~しなければ、自分の気が済まない/必ず~てやる」という強い決意を表します。また、心理・感情を表す動詞に付くと、例文3~5のように「必然的に/思わず~させてしまう」という自然・自発の感情を表します。
この文型は動詞の使役形と結びつくことも多く、強制的に或いは自然にある状況・心理状態に追い込むことを表します。その場合、「~ないではいられない/~ずにはいられない」(→文型261)と主語が好対照の文型になります。
その映画は私を感動させずにはおかなかった。(映画は・私)
私はその映画に感動せずにはいられなかった。(私は・映画)
【例文】
1.あいつは生意気な奴だ。一度、あいつの鼻っ柱をへし折ってやらないではおかない。
2.彼らがこのような内政干渉をつづけるなら、我々はいかなる手段をもってしても、撃退せずにはおかない。
3.大臣のその一言は、波紋を呼ばずにはおかなかった。
4.彼の言動は、私を不安にさせずにはおかなかった。
5.その子の学校に対する抗議自殺は、大人達を反省させずにはおかなかった。
【例題】
1) A紙が我々に根も葉もない中傷を加えた(以上/からこそ)、謝罪(しない/させない)では(いられない/おかない)。
2) 彼女の献身的( )母親を看護する姿は、見る人を(感動する→ )ずには(おく→ )。
020)~ないでは済まない/~ずには済まない/~なしでは済まない
動詞:[ない]形 + ないでは済まない
ずには済まない
名詞: × + なしでは済まない
【会話】
百恵:この前の約束、どうしたの。私、ずっと待っていたのよ。一杯おごっていただかないでは済まないわよ。
山田:あーあ、会社でも失敗しちゃって、始末書なしでは済まないだろうっていうのに・・・。
李 :お前、厄年じゃないのか。どうだい今晩あたり、厄払いに一杯。
【解説】
「~ないでは済まない/~ずには済まない/~なしでは済まない」は、どれも「~しなければ、問題は解決しない」「~しなければ、許されない」という意味を表します。「~なければならない」と基本的には同じ意味と考えていいでしょう。
類義文型に「~ざるを得ない」(→文型106)がありますが、意味上次のような違いが生じます。
謝らないでは済まない ≒ 謝らなければならない
謝らざるを得ない ≒ 謝るしかない
【例文】
1.このことは、君が直接、彼に謝らないでは済まないぞ。
2.人から借りた金を、返せないでは済まないよ。
3.これだけの被害者を出したとあっては、刑事責任を問われずには済まないだろう。
4.潔く自分の非を認めなさい。知らぬ存ぜぬでは済まされない。
5.君も料理人の端くれなんだから、客から注文された品を作れませんでは済まないよ。
【例題】
1) どこかで妥協(する/しない)ことには、交渉は決裂(せずには済まない/せざるを得ない)。円満解決にはこちらも一歩譲歩せずには(済むまい/いられまい)。
2) 部下の失敗で(ある→ )と、上司としての君が責任を(問われる→ )には(済む→ )よ。
021)*~さえ/~すら
名詞 : × + さえ
格助詞:に・で・と・から・の すら
動詞 :て形/ます形
【会話】
李 :雑談には乗ってくれたけど、肝心の商売の話はきっかけすらつかめなくてねえ。
山田:君でさえ説得できないのだからね。でも、彼は聞く耳は持ってるから、最後まで諦めるなよ。
李 :今でさえこんなに競争が激しいから、年度末には八掛け二割り引きはおろか、半値すら登場するよ。
【解説】
「~さえ/~すら」は接続が複雑ですが、よく使われる形を次項で取り上げています。名詞に直接接続し、格助詞「が/を」の位置で使われるとき、「~でさえ」の形もあります。どちらも極端な一例を取り上げて、「だから、他はもちろん~だ」という意味を表します。強い「~も」と考えてもいいでしょう。
ただし、「~さえ」はいいことにも良くないことにも使えるのですが、「~すら」は軽視・蔑視の感情を含んでいるため、良くないことに使われます。
小学生なのに、高校の数学問題さえ(?すら)できる。
高校生なのに、小学校の数学問題さえ(⇔すら)できない。
【例文】
1.一年も日本語を勉強していながら、カタカナすら読めないのか。恥ずかしいとは思わないのか。
2.なぜ黙っている?この私にさえ話せないようなことなのか。
3.足し算すらろくにできないんだよ。微分積分がわかるはずがないじゃないか。
4.腰が痛くて、じっと寝ているのさえ辛い。
5.あきれてしまって、怒る気にさえなれない。
【例題】
1) 私の生まれたところは、駅からタクシー(に/で)(乗るさえ/乗ってさえ)、一時間は(かける/かかる)山村です。
2) 毎日の御飯( )すら、ろくに(食べられる→ ) 人がいるというのに、ぜいたくを言うんじゃない。罰( )当たるぞ。
022)~そばから
動詞:原形 + そばから
【会話】
山田:稼ぐそばから奥さんが使ってしまい、いつまでもその日暮らしだと、彼の嘆くこと嘆くこと・・・。
佐藤:でも、彼もよくないですよ。給料が入るそばから、競輪・競馬場通いですから。似たもの夫婦ですよ。
山田:二人で使ってるんじゃ、世話ないや。「目くそ、鼻くそを笑う」といった類だね。
【解説】
「~そばから」は完了形(「た」形)と接続する例も希にありますが、ほとんど動詞の原形に接続して「~すると、すぐ~」という意味を表します。「~と、すぐ~」に属する「~なり」(→文型280)、「~や否や」(→文型428)、「~が早いか」(→文型046)や「~とたんに」(→文型148)などと同義表現ですが、同一場面で反復される事象に使われるのが特徴で、以下のような一回限りの出来事に使うと不自然になります。この文型は「~そばから、すぐ繰り返して~」と副詞を入れて作文するようにするといいでしょう。→例題1)
君たちは私が教えるそばから(×が早いか)忘れていく。
泥棒は警官を見るが早いか(×そばから)逃げ出した。
【例文】
1.もうこの子ったら、作るそばから食べちゃうんだから。
2.歳を取ると物覚えが悪くなり、聞くそばから忘れてしまう。
3.私が飲み干すそばから、またなみなみと酒がつがれた。
4.消すそばから落書きがされて、これじゃまるでいたちごっこだ。
5.私が注意するそばから、ほら、また間違って。
【例題】
1) いくら洗濯し(たら/ても)、子供たちは洗う(が早いか/や否や/そばから)服を汚し(てしまう/ている/ておく)。
2) 君たち( )はあきれるよ。私が(教える→ )そばから忘れていき、次の日になると何一つ(覚えている→ )( )きている。
023)*~だけでなく~も/* ~のみならず~も
名詞(+格助詞): × + だけでなく~も~
動詞・形容詞 :普通形 <ナ形ーな> のみでなく~も~
のみならず~も~
のみか~も~
【会話】
李 :ナイフを鞄にいつも入れて持ち歩いている中学生が、四人に一人はいるって書いてあるけど、こうなると親や学校だけでなく、社会全体でも取り組む問題だなあ。
良子:うちの小平だって、外で何してることやら。まさか喝あげなんてしていないでしょうねえ。
李 :念のために、鞄の中を調べておけよ。
【解説】
「~だけでなく~も~」は「~に限定できない。それ以外にも~」という意味を表しますが、その改まった言い方として「~のみならず~も~/~のみか~も~」文型があります。しかし、「~のみならず~も~」は文語なので、会話で使うと硬い印象になります。
また「~ばかりでなく~も~/~ばかりか~も~」(→文型363)なども同じ意味の用法で、自由に置き換えることができます。
【例文】
1.彼は優しいだけでなく、勇気もある好青年です。
2.その方法は効率的なだけでなく、経済的でもある。
3.彼女は英語のみか、フランス語・ロシア語もぺらぺらです。
4.殴った方だけでなく殴られた方にも問題はあったはずです。けんかの一方だけしかるのは不公平です。
5.口先のみでなく、実際に行動しろ。不言実行あるのみだ。
【例題】
1) 「人間の頭脳は目指す(べき/べく)目的が(与えられれば/与えられなければ)、活性化しない(だけ/のみ)ならず、退化(さえ/こそ)する」と脳学会で発表された。
2) タイのバーツ( )端( )発した金融危機は、近隣諸国のみ( )日本( )まで波及した。
024)~た‐ところで~ない
動詞・形容詞: た形 + ところで ~ ない
【会話】
佐藤:さあ、三曲終わったら、交代、交代。
李 :君がマイクを放さないものだから、もう、こんな時間だよ。女房が心配してるよ。
山田:あれ、もう12時か。今から出たところで、終電には間に合いそうもないし、サウナで一泊しないか。
李 :独身は気が楽だねえ。悪いが、僕は失礼するよ。
【解説】
「~た‐ところで」は常に文末で否定形(「ない」形)や「無駄だ/無意味だ/無理だ 」のような否定の意味の語と呼応して、「たとえ~ても、~ない」を表します。後件では「役に立たない・大したことはない・無駄だ」などの否定的な判断を表すのが特徴です。「~ても」と違って、文末で「~てください/~たい/~ほうがいい/~なければならない」などの意志表現や、「~した/~だった」などの既定表現が使えませんから、注意してください。
今更後悔しても(・後悔したところで)、仕方がないよ。
たとえ苦しくても(×苦しかったところ)で、がんばりなさい。
いくら待っても(×待ったところで)彼は来なかった。
【例文】
1.これ以上議論を続けたところで、堂々めぐりだ。
2.考えてばかりいたところで、一歩も前には進まない。
3.私が言ったところで、素直に聞くような奴じゃない。
4.この子にこんなに高価な百科事典を買ってやったところで、猫に小判ですよ。
5.たとえ失敗したところで、失うものがあるわけじゃないし、駄目でもともとさ。先ずやってみるよ。
【例題】
1) 学校の成績が少しばかりよかった(ところで/ところが)、それで将来が約束(する/される)(わけがない/わけにはいかない/わけではない)。
2) もう泣くのはおやめ、いくら(泣く→ )ところで、(死ぬ→ )息子は帰っては(来る→ )。
025)~だに
名詞(+格助詞): × + だに
動詞 :辞書形/ます形
【会話】
部長:旧い世代の私の目から見ても、彼はなかなかの人物だよ。何かやってくれそうな男だねえ。
李 :でも、周りの女性は彼のことなんか一顧だにしていませんよ。むしろ気味悪がっていますよ。百恵さんは?
百恵:あの彼と二人だけになるなんて、想像するだに恐ろしいわ。ブルドッグの方がまだましよ。
【解説】
「~だに」は極端な例を取り上げて強調する古い表現で、「~だけでも/~さえ/~すら」に相当する表現です。例えば例文2は「~だけでも」に置き換えることができますし、それ例外は「~さえ/~すら」を使うことができます。この「~だに」は今日では書面語に属しますが、一般には否定形と呼応して「~だに~ない」の形で使われることが多いでしょう。
想像だにしなかった。
→想像さえしなかった。
→想像すらしなかった。
【例文】
1.えっ?私の絵が入選したの?夢にだに思わなかったわ。
2.死ぬ前に、一目だに行方しれずの息子に会いたい。
3.まさかこんなことになろうとは、思いだにしなかった。
4.あの当時ことは、思い出すだに嫌ですねえ。できれば忘れてしまいたい記憶です。
5.彼にいくら声をかけても、知らんぷりで、振り向きだにしなかった。
【例題】
1) 市場調査(だに/しか)(し/せ)ず、商品開発ができる(わけがない/わけにはいかない/わけではない)。
2) 溺れる子供を(助ける→ )んがため、身の危険だに(顧みる→ )ず、彼は荒れ狂う海に(飛ぶ→ )込んだ。
026) ~たりとも~ない
名詞・数詞: × + たりとも ~ ない
な
(注:否定形の他に、禁止表現「動詞の原形+な」もよく現れる)
【会話】
佐藤:今の取り組み体制では、期限内に終わらせる自信はありません。
部長:ところで君達、昼飯から戻ってきたのは何時だった?これからは一分たりとも無駄にしないことだ。
山田:おいおい、佐藤、そんなに落ち込むなよ。一睡たりともするなって言われなかっただけ、まだましだよ。
【解説】
「~たりとも」は文末で否定の表現と呼応して「~であっても、決して~ない」という全面否定を表します。強い「~も~ない」に相当すると考えればいいでしょう。前に来る語は「一」と結びついた数詞が多く、また文末で禁止の「~な」と呼応することも多いでしょう。なお、下の例はどれも同じ意味を表しています。
ほんとうの商人は、一円
たりとも
であっても
であろうと
も、決して
粗末にしたりはしない。
【例文】
1.私は母に「御飯の一粒たりとも無駄にするな」と厳しく叱られたことがある。
2.一瞬たりとも彼から目を離すな。動きがあれば報告せよ。
3.油断大敵、小敵たりとも侮るなかれ。
4.一刻たりとも時間を浪費するな。今は一秒一刻を争う事態なのだ。
5.女・子供たりとも見逃すな。不審な行動をするものがいたら、連行せよ。
【例題】
1) 彼は刑事の取り調べ(について/に対して)、一言(なりとも/たりとも)語ら(ぬ/ず)、完全黙秘を貫いた。
2) 沖縄の反戦地主達は、「一坪たり( )( )米軍に(渡す→ )な」を合い言葉( )している。
027)~たる者/~ともあろう者が/~としたことが
名詞(人・組織): × + たる者 ・
ともあろう者が ・
としたことが ・
【会話】
百恵:今朝、課長ともあろう者が、混んだ電車の中で、競艇新聞を広げていたのよ。
佐藤:当社の課長たる者、せめて一般新聞にしてほしいとは思わない?
百恵:それって社長の台詞みたい。失礼だけど、一介の平社員たるあなたの口から聞くとは思わなかったわ。
【解説】
これらの文型は「<人や国・会社など擬人化できる対象>は当然~であるべきだ」という社会的常識・評価を共通の認識にしています。
「~たる者」はほとんどの場合、「~なければならない/べきだ」と呼応し、当然あるべき姿はどうかという判断を後件で表します。「ともあろう者が」は、「当然そうあるべきなのに、実際はそれに反して~」と矛盾した事態を述べる表現で、非難・批判・疑問を強く表します。
一方、「~としたことが」は自分を含めて「~がそんな過ちをするはずがないのに、どうして~んだろう?」と不注意や思慮不足の結果、予想しなかった過ちを犯したときに使われます。
【例文】
1.仮にも医者たる者は、「医は仁術」と心得るべきだ。
2.教師たる者、生徒のお手本にならなければならない。
3.政治家ともあろう者が、金儲けのために目の色を変えるとは何事か!
4.警察官ともあろう者が、暴力団に捜査情報を流していたとは、許し難いことだ。
5.私としたことが、どうしてこんなミスをしたんだろう。
【例題】
1) 日頃、何事にも慎重な彼(としたことが/たる者/ともあろう者が)、このようなミスをする(とは/というのは)、全く予想(しか/だに)できないことだった。
2) 信用第一の銀行( )( )あろう者( )、焦げ付き債権の事実を(隠す→ )続けていた。
028)~つ~つ
動詞A:[ます]形 + つ 動詞B:[ます]形 + つ
【会話】
李 :どうしたの?目が兎みたいに赤いよ。
佐藤:謝ろうかどうしようかと、彼女の家の前を行きつ戻りつしているうちに、東の空が白んできちゃってね。
李 :君たち二人はどうなってるの。いつも二人で順番に振りつ振られつじゃないの。
佐藤:そろそろ年貢を納めて、プロポーズしようかなあ。
【解説】
「~つ~つ」は「~たり~たり」(→文型158)とほぼ同じ意味を表しますが、同一場面・同じ時間帯の中で起こっていることを表すのが特徴で、下のような例には使えません。
昨日の日曜日は漫画を読んだり、洗濯をしたりしてのんびり過ごした。
人生、泣いたり笑ったり、いろいろあるものだ。
これらは異なる場面を例示しているからです。逆に「~つ~つ」文型は、どれも「~たり~たり」を使って表せます。
抜きつ抜かれつの接戦 →抜いたり抜かれたりの接戦
【例文】
1.昨日のマラソンは、実に手に汗を握る抜きつ抜かれつの大接戦でしたねえ。
2.人間は持ちつ持たれつの関係ですよ。
4.雲間から富士山が見えつ隠れつしていた。
5.追いつ追われつ、彼ら二人はすばらしい勉強面のライバルです。
7.気のおけない仲間達と、差しつ差されつ飲む酒の味は格別だ。
【例題】
1) 地図を片手(に/で)、行きつ(来/戻り)つして探したが、(やっと/とうとう)彼の家は見つからなかった。
2) まるで木の葉の( )( )に、小舟が波間で(浮く→ )つ(沈む→ )つしている。
029)~っ放し
動詞:[ます]形 + っ放しだ
っ放しで
っ放しの + 名詞
っ放しにする
【会話】
山田:最近、佐藤は真理さんにお熱みたいだね。昨日、飲みに行ったんだろ?噂だと近々結婚するらしいけど。
李 :ああ、でも、彼と飲みに行ったりするんじゃなかったよ。のろけ話を聞かされっ放しで、当方被害甚大さ。
百恵:ふっふ。でも、彼ったら彼女に押されっ放しだって、もっぱらの噂よ。彼女に頭が上がらないんだって。
【解説】
「~っ放し」は放置・放任の表現で、動詞の[ます]形と結びついて、「~したまま、放っておく」という意味を表します。「~したまま」(→文型406)を使っても表せますが、「~っ放し」はいい意味で使われることはなく、よくない評価にたっている点に特徴があります。もう一点注意してほしいのは、「~まま」は「~ないまま/N+まま」の形もありますが、「~っ放し」には名詞や否定形と結びつく形はないことです。→例題1)
五時間も座ったまま(・座りっ放し)だったので、腰が痛い。
今日は座ったまま(×座りっ放しで)話します。
【例文】
1.あいつは俺から金を借りっ放しで、催促しても返そうとしない。
2.水道の水は出しっ放しにしないで、必ず蛇口を閉めること。
3.何だ、このあり様は。部屋中、散らかしっ放しじゃないか。
4.靴は脱ぎっ放しにするんじゃありませんよ。きちんとそろえておきなさい。
5.このままやられっ放しじゃ、腹の虫が治まらない。
【例題】
1) 仕事もやり(まま/っ放し)、後かたづけもしない(まま/っ放し)帰るなんて、無責任(極みだ/極まる)。
2) 日本( )は、子供の教育を母親に(任せる→ )っ放し( )している父親がほとんどだ。
030)~であれ/~であろうと
名詞・ー格助詞 : + であれ ・
ナ形容詞 :<ー×> であろうと
疑問詞や副詞など: であれ~であれ ・
であろうと~であろうと
【会話】
李 :今度の連休に中国へ行くんだって?中国は広いから、どこへ行くか迷ったんじゃない?
真理:ええ、でも、たとえ一時間であろうと無駄にしないよう予定を詰め込んじゃったから、超過密なの。
李 :寝る時間もないようなスケジュールであれ、行けさえすれば幸せなんだろ、君の中国語を試す時だからね。
【解説】
「~であれ/~であろうと」は「~でも/~であっても」を意味する点で同じです。「AであれBであれ」また「AであろうとBであろうと」と繰り返されると、「A、Bのどちらの場合でも」という意味を表すようになります。
学生だ ・ 学生でも
学生である ・ 学生であれ/学生であっても/学生であろうと
「である」は文語的・論文調の「だ」に相当しますから、名詞のほかにも広範な語と結びつきます。「元気だ/きれいだ」(ナ形容詞)、「私にだ/私とだ」(名詞+格助詞の形)、「ゆっくりだ/少しだ」(副詞)など、この「だ」は全て「である」で置き換えられ、この文型は この「~である」の形から作られます。
【例文】
1.誰であれ、欠点の一つや二つは持っています。
2.いかなる天才であれ、人知れぬ努力はしているものだ。
3.彼ときたら、ビールであれウイスキーであれ、およそ酒と名のつくものには目がない。
4.たとえ困難であろうと、やると決めたからには途中で投げ出すような真似はしない。
5.学生であろうと教師であろうと、学問の前には平等でなければならない。
【例題】
1) 本当にお腹が空いた時は、一杯の粥(であれ/であれば)、何物(にもまして/にもかかわらず)おいしい(ことだ/ものだ)。
2) そのことを私( )であれ、事前( )話してくれていたら、こんな失敗は(避けた→ )のに。
031)~てからというもの/ここ~というもの
動詞: て形 + からというもの ・
ここ/この + <期間を表す語> + というもの ・
【会話】
山田:李君は昔は三日にあげず酒や麻雀で忙しく、いつも寮に戻るのは午前様だったんだよ。
佐藤:息子ができて、父親になってからというもの、まるで伝書鳩みたいですね。
山田:自分も肝臓を壊してからというものはお酒は控えてるけど、あんな伝書鳩にはなりたくないやね。
【解説】
形式名詞「もの」のつくる慣用文型で、「ここ一週間というもの/この五年というもの」のように期間を表す数詞と結びついて、「~の間ずっと~」を表します。動詞とは「~てからというもの」の形で接続し、「~てから、ずっと~」を表す強調表現になります。
同義文型の「~て以来」(→文型178)と「~てからというもの」を比べたとき、前者は客観的・無感情ですが、後者は話者の喜怒哀楽の感慨・感情が現れる点に特徴があります。
【例文】
1.この一週間というもの、ろくに睡眠もとっていません。
2.ここ一、二年というもの、いつも仕事に追われ、妻と二人でゆっくり旅行をする時間もなかった。
3.退職してからというもの、何か心に穴が空いたようだ。
4.子供が生まれてからというもの、妻は子供のことにかかりっきりで、私のことなど放ったらかしです。
5.あなたに会ってからというもの、僕の心は千千に乱れ、 何も手につかなくなった。
【例題】
1) (ここ/そこ)一ヶ月という(こと/もの)、客足が遠のいていて、御覧(の/×)通りの有り様です。
2) よほど辛い( )だろう。(離婚する→ )からというもの、彼は酒と博打( )明け暮れている。
032)~でなくてなんだろう/~と言わずしてなんだろう
名詞・名詞句: × + でなくてなんだろう
でなくてなんだ
引用句 : × + と言わずしてなんだろう
と言わずしてなんだ
(注:口語では断定を強めた「だろう→だ」の形も現れる)
【会話】
李 :お前、最近やけに嬉しそうだね。廊下を歩いてるときなんか、まるでスキップしてるみたいだぞ。
佐藤:彼女のことが頭から離れない。ああ、これが愛でなくてなんだろう。
李 :馬鹿を言うのも休み休みにしたら。僕に言わせりゃ、女の何たるか、「知らぬが仏」と言わずしてなんだろう。
【解説】
この文型は反問表現で、どちらも「正に~こそ、~である」という強い断定になります。会話で使われることはあまり多くなく、書面語と言えます。
「~でなくてなんだろう」は広範な語と結びつきますが、「~と言わずしてなんだろう」は格言や一般によく使われる言葉を引用する場合がほとんどです。
また類義語の「~そのものだ」(→文型126)や「~にほかならない」(→文型341)と比べたとき、「~でなくてなんだろう」「~と言わずしてなんだろう」は、より話者の感嘆・感動などの感情が表れるのが特徴でしょう。
これこそ、ほんとうの愛だ。
→これこそ愛そのものだ。
→これこそ愛にほかならない。
→これが愛でなくてなんだろう。
→これを愛と言わずしてなんだろう。
【例文】
1.武力で自国の「正義」を他国に押しつけるようなやり方が、覇権主義でなくてなんだろう。
2.環境破壊が近代産業社会の産物でなくてなんだろう。
3.よく見てみろ。これが偽作でなくてなんだと言うんだ。
4.この奥深い味を、匠の味と言わずしてなんだろう。
5.平凡な暮らしの中にこそ幸せがあると言わずしてなんだろう。
【例題】
1) 人権(とか/と)正義(とか/と)、大義名分をつけてはいるが、アメリカの中東介入の真の目的が、石油利権(でなくて/でないで)なんだろう。
2) 彼らの(如し→ )友情( )刎頚の交わりと(言う→ )ずしてなんだろう。
033)~ではあるまいし/~ではあるまいに
名詞・名詞句: × + ではあるまいし
じゃあるまいし
ではあるまいに
じゃあるまいに
(注:「~じゃなかろうし」「~じゃなかろうに」の形もある)
【会話】
佐藤:おい、今晩空いてないか?チケットが二枚あるんだけど、いま評判のあの映画、見に行かないか?
李 :さては振られたな。彼女も子どもじゃあるまいし、君の気持ちに気づいてもよさそうなものを。
佐藤:「女心と秋の空」でもあるまいに、なに考えてるのか、てんで見当がつかなくて、振り回されてばかりだよ。
【解説】
「~で(は/も)あるまいし」(「~で(は/も)なかろうし」も同じ意味)は、例文1~4のように「~ではないのだから」に相当する原因・理由の表現を作ります。会話では「~じゃあるまいし」が多く使われるでしょう。
一方「~ではあるまいに」は「~ではないのに」に相当する逆説表現です。強い失望・残念・不満・反発の感情を表すのが特徴で、したがっていい事態については使えません。この逆説「のに」に相当する助詞の「に」は、今もときどき文では見かけますので、覚えておきましょう。→例題1)2)
もう夜の10時になるというに、子ども達は帰ってこない。
【例文】
1.神や仏じゃあるまいし、何から何まで完全な人間なんているはずがないじゃないか。
2.十四、五の小娘じゃあるまいし、めそめそ泣くな。
3.君一人が悪いわけではあるまいし、そんなに落ち込むことはないよ。
4.悪意があってしたんじゃなかろうし、そんなに怒らなくてもいいじゃないか。
5.子供じゃあるまいに、親のすねかじりなんて恥ずかしくないか。
【例題】
1) 小中学生じゃあるまい(し/に)、こんなことも親に相談し(てからでないと/てはじめて)(決め/決められ)ないのか。
2) 子供の使いじゃあるまい( )、手ぶらでこんな大切なことを(頼む→ )には(行く→ )ないよ。
034)~てやまない/~てやまぬ
動詞:て形 + やまない
やまぬ
【会話】
李 :うちの部長、今度、子会社に社長として出向するらしいよ。社長だったら、思う存分に腕を振えるよな。
佐藤:人柄といい仕事ぶりといい、私の尊敬してやまない方だったので、お別れするのがとても残念だよ。
李 :残念なことは残念だが、またいつか御一緒できるさ。
佐藤:そうだね。近いうちに送別会を開こうよ。
【解説】
「や(止/停)む」は「雨が降り止んだ」のように使われる動詞です。この「~てやまない/~てやまぬ」は「止む」の否定形「止まない」から作られていて、「ずっと~ている」「永遠に~する」という話者のひたすら思い続けている感情を表すようになります。この文型は今日では書面語に属するもので、前につく動詞もある程度限られています。口語では「ずっと~している/~し続けている」を使えばいいでしょう。
彼は私が 尊敬してやまない(≒ずっと尊敬している)政治家だ
私が愛してやまない(≒ 愛し続けている)祖国
【例文】
1.先生の一日も早い御健康の回復を念願してやみません。
2.彼が求めてやまぬ権力とは、果たしてどれほどの価値があるものなのか。
3.御結婚おめでとうございます。お二人の末永いお幸せを願ってやみません。
4.どこまでも社長の座を争ってやまぬ二人は、ますます亀裂を深めていった。
5.オリンピックにおける諸君の活躍を期待してやまない。
【例題】
1) 自殺(する/した)あの歌手は、うちの娘も憧れ(てたまらなかった/てやまなかった)若者達のヒーロー(です/でした)。
2) 大使館に(閉じこめる→ )ている人質の方々が無事(救出する→ )ことを(祈る→ )やみません。
035) ~と相まって
036)~とあって/~とある
名詞 : × / だ + とあって ・
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> とある ・
(注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い)
【会話】
李 :大き目のテントを買ってきたよ。大は小を兼ねるし。
良子:里帰りの道すがらだけど、小平は久しぶりのキャンプとあって大喜びよ。
李 :一平に会えるとあって、ご両親も楽しみにされてるようだね。手紙にも「早く一平の顔が見たい」とあるけど、目に入れても痛くないほど可愛い初孫だからねえ。
【解説】
「ある」は事物の存在や、「~てある」(→資料。)の形で人為動作の結果、残っている状態を表したりします。この「ある」が「と」と結びついたのが「~とあって」で、「~という事態なので」という意味を表します。これは「~ので」系(→資料、)に属するする原因・理由の表現で、すでに起こったことを表しますから、文末で「~でしょう/~かもしれない/~つもりだ/~たい/~(よ)う」などの意志・推量表現が使えません。
なお、「~とある」という形は、例文5のように「~と書いてある/~と書かれている」という意味を表します。
手紙に「来年、帰国する」とあった(・と書いてあった)。
【例文】
1.夏休みが始まるとあって、子ども達はうれしそうだ。
2.まもなく大学入試とあって、学生たちの表情にも緊張の色が隠せない。
3.優勝した横綱を一目見たいとあって、駅前は押すな押すなの人だかりだった。
4.土地や家屋の値下がりが続いているとあって、不動産業者は四苦八苦している。
5.立て札に「芝生内に立ち入るべからず」とある。
【例題】
1) (もうすぐ/早速)正月(とあって/とあれば)、人々の足どりもせわしく(して/なって)きた。
2) 年( )一度のお祭り( )あって、街には露店が並び、大変な(にぎわう→ )ようだ。
~とあれば/~とあっては
名詞 : × / だ + とあれば
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> とあっては ~ ない
(注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い)
【会話】
良子:ねえ、折り入ってあなたにお願いがあるんだけど。
李 :あなたの頼みとあれば、たとえ火の中、水の中・・・。それで、何、折り入っての頼みとは?
良子:じゃ、言うけど、私、働きに出てもいいかしら?
李 :えっ?突然、何を言い出すんだい。
良子:一平の教育資金もいるし、広い部屋にも移りたいし。
【解説】
「~とあれば/~とあっては」は「~(の)であれば」という意味の条件の表現で、書面語です。会話では「たら/なら」を使えばいいでしょう。
あなたのためとあれば、私は死ぬことだってできます。
→ あなたのためなら、私は死ぬことだってできます。
→ あなたのためだったら、私は死ぬことだってできます。
なお、「~とあれば」は広く使えますが、「~とあっては」は常に文末で「~しないわけにはいかない/~するほかない/~しかない」などの否定表現と呼応します。→例題1)
あなたのためとあれば(・とあっては)、協力しないわけにはいきません。
あなたのためとあれば(×とあっては)、喜んでいたしましょう。
【例文】
1.あなたのためとあれば、私は死ぬことだってできます。
2.必要とあれば、いかなる援助もいたしましょう。
3.この子の命が助かるとあれば、私は自分の命を投げ出したって惜しくない。
4.この妥協案すらのめないとあっては、交渉の決裂は避けられまい。
5.スポンサーが反対だとあっては、この企画はあきらめるしかない。
【例題】
1) 電話(で/が)済む(とあれば/とあって)、わざわざ行く(までもない/しかない)だろう。
2) 住民の賛同( )(得られる→ )とあっては、ごみ処理場の建設は(あきらめる→ )ざるを得ない。
037)~といい~といい/~といわず~といわず
名詞A:× + といい + 名詞B:× + といい
といわず といわず
【会話】
李 :君の着てるドレス、色といい柄といい申し分ないね。
良子: どうせ誉めるなら、ドレスといいモデルといい申し分ないと言うの!肝心のことを忘れてるわ。
李 :「馬子にも衣装」って言葉があったよね。
良子:あなた、何が言いたいの?
李 :いやいや、こちらの話し。触らぬ神に祟りなし。
【解説】
「~といい~といい/~といわず~といわず」はA・Bを例示することで「AもBも、全部~」ということを表しています。両者の違いは次のような例で現れます。
手と言い足と言い血だらけだった。 <手足の至る所>
手と言わず足と言わず血だらけだった。<手足だけでなく体の至る所>
つまり、「AといいBといい」は取り上げたA・Bに焦点があり、「AといわずBといわず」は「A・Bを含めて、他のCもD…も」全体に焦点があるということになります。→例題1)
【例文】
1.この陶器は、その渋い色といい素朴な形といい、実にすばらしい。
2.君といい妻といい、どうして女はそんなに現実的なんだろうねえ。
3.彼女は容姿といい知性といい、申し分のない女性だ。
4.山といわず野といわず、一面雪におおわれた。
5.彼は昼といわず夜といわず、つきっきりで妻の看病をした。
【例題】
1) 彼はウイスキー(といい/といわず)ビール(といい/といわず)、酒であれば、何に(も/でも)目がない。
2) 学歴(という→ )将来性(という→ )、願ってもない(相手→ )のに、どこが(気に入る→ )の?ほかに好きな人でもいるの?
038)~というところだ/~といったところだ
名詞・数詞 : × + というところだ
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> といったところだ
ってところだ<口>
(注:広く句と結びつき、およその数量・程度を表す)
【会話】
良子:ねえねえ、このワンピースはお買い得だわ。買おうかしら。ねえ、あなたどう思う?
李 :見た目はいいけど、こんな安物はすぐに飽きるよ。二、三回着たらおしまいってところだな。
良子:「安物買いの銭失い」といったところかしら。じゃあ、もっと高いの、買ってもらおうっと!いいでしょ?
【解説】
形式名詞「ところ」には程度を表す場合があって、そこから作られた「~というところだ/~といったところだ」は「~と言ってもさしつかえないだろう/だいたい~程度と言えるだろう」という自己の状況判断や評価を表します。口語では「~ってところだ」が多く用います。なお、下の例はどれも同義と考えていいでしょう。
二人の力はほとんど同等だと思う。
→二人の力は同等といったところだ。
→二人の力は同等といってもさしつかえない。
【例文】
1.この車は高くても五百万円といったところだろう。
2.両者の勢力は伯仲していて、ほぼ互角ってところだ。
3.君の成績は、合格ラインすれすれというところかな。
4.彼は指導者というより、全体のまとめ役といったところだ。
5.最悪の事態は脱したというところだが、まだまだ予断を許さない。
【例題】
1) この調子で進めば、(年内に/年内は)工事(が/を)完成するのは、ほぼ間違いない(というものだ/というところだ)。
2) 彼の財力( )もってすれば、次期首相の座( )左右することも、不可能ではないといった( )( )( )だろう。
039)~と言えど(も)
名詞 : × / だ + と言えど(も)
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>
(注:広く句と結びつく。「~だ」は省略することが多い)
【会話】
李 :大工仕事だって、小平もやらせればちゃんとできるじゃないか。子供と言えども馬鹿にできないな。
良子:でも、あなたも老いたりと言えど、昔とった杵柄というところね。見直したわ。
李 :まだ三十歳そこそこの僕に、「老いたり」はないぜ。おい、小平、そこの釘と金槌をとってくれ。
【解説】
「~と言えども」は書面語で、「~ても/~であっても/~と言っても」を表す「~ても」系の逆説表現です。この表現は「たとえ/いくら/いかに/いかなる~と言えども」のように副詞と呼応させて使うことが多いでしょう。そして、この文型は「~ても、例外なく全て~」という強い語感を持っています。
子供と言えども、馬鹿にはできない。
→子供でも、馬鹿にはできない。
→子供といっても、馬鹿にはできない。
【例文】
1.当たらずと言えども遠からず。(慣用表現)
2.一粒の米と言えども、粗末にしてはいけない。
3.いかなる人と言えども、許可のない者を通すわけにはいかない。
4.いかに親しき仲と言えど、わきまえるべき礼儀はある。
5.いかなる困難が待ちかまえていると言えども、わが決心は微動だにせず。
【例題】
1) 「風邪は万病の元」。軽い風邪(と言えば/と言えども)、(用心する/用心した)(に過ぎない/に越したことはない)。
2) 景気の先行き( )まだ不安があると言えども、手をこまねいて、嵐の(通る→ )過ぎる( )を待っている( )( )では、わが社の活路は開けない。
040)*~と言ったら/~ったら/~ったらありゃしない
名詞 : × + といったら ・
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×> ったら<口>
といったらない ・
ったらない<口>
ったらありゃしない<口>
【会話】
山田:この十月に佐藤と結婚するんだって?おめでとう!羨ましいったらありゃしない。
真理:山田さんったら、よく言うわね。いつかの彼女とうまくいってるんでしょ。
山田:それが、彼女ったら外にも彼がいてさ、ばかばかしいったらないよ。僕はいつも損な役回りの道化役さ。
【解説】
「~と言ったら」(口語形は「~ったら」)は話題提示で、「~と言うと」(→文型210)や「~と言えば」(→文型217)と同じく「~に関して語ると <≒は>」という意味を表しますが、感動・感嘆・驚き・失望など話者の感情を強く打ち出すのが特徴です。
ここから例文3、4のように「~と言ったらない/~と言ったらありゃしない/~ったらありゃしない」などの形で名詞・形容詞・感情を表す動詞について、「言葉で表せないほど~だ/最高に~だ」という驚きや感情を強く強調する程度表現や、例文5のように「Aと言ったらA」という形で「絶対~だ/する」を強意の表現が生まれます。「~と言ったら」は感情強調の話題提示と言えるでしょう。→例題1)
【例文】
1.そのときの悔しさと言ったら、もう口では表せません。
2.その女性の美しさと言ったら、まるでこの世の人とは思えないほどだったよ。
3.何よこれ。この部屋の汚いと言ったらありゃしないわ。まるで足の踏み場もないじゃないの。
4.毎日が同じことの繰り返しで、退屈ったらないよ。
5.行かないと言ったら絶対に行かない。もう、私の気持ちは変わらないわ。
【例題】
1) その時の彼の(驚く/驚き)よう(と言ったら/と言うと)なかったよ。もう目を白黒(して/させて)たよ。
2) いやだと言ったら絶対に( )( )よ。(死ぬ→ )だって、あんな男と結婚する( )はいやよ。
041) *~かと思うと/*~かと思いきや/~かと見ると
名詞 : × + かと思うと/かと思えば
動詞・形容詞:普通形<ナ形 ー×> かと思ったら
かと思いきや
かと見ると/かと見れば
(注:「~(の)かと思うと」のように「の」が入ることもある)
【会話】
真理:さっきのお客さん、入ってきたかと思ったら、いきなり大声で文句を言い始めたんだから。
李 :ゆゆしき一大事かと思いきや、結局はどういうこともなかったね。よかった、よかった。
百恵:そうかと思うと昨日みたいに、言葉少なでも迫力があって恐いお客さんもいるわね。
【解説】
これらの文型は「~(だろう)かと思ったら、意外にも~した/だった」という予想外の事態の発生を表します。どれも既定事実の表現なので、文末は完了形(「た」形)になります。「~かと見ると・~かと見れば」は視覚判断が強調されていますが、「~かと思うと・~かと思えば」と基本的な意味は同じです。なお、「~かと思いきや」は「~かと思うと」の文語的表現です。
「か」のない「~と思うと/と思ったら/と思いきや」の形も使われますが、そのときの接続は次の通りです。
名詞 : だ と思うと
動詞 : 普通形 + と思ったら
形容詞:普通形<ナ形ーだ> と思いきや
【例文】
1.静かなので勉強してるのかと思うと、ぐうぐう寝ていた。
2.右かと見れば左から、左かと見れば右から、そのボクサーは多彩なパンチを繰り出した。
3.怒るのかと思いきや、なんと笑い出したではないか。
4.もう出かけたかと思ったら、まだ家でぐずぐずしていたのか。急がないと遅れるぞ。
5.一つ解決したかと思うと、また一つと、次から次に問題が出てくる。
【例題】
1) この子(って/ったら)、さっき(まで/までに)泣いてたかと思ったら、(もう/まだ)笑ってるわ。
2) 彼は(怒る→ )出した( )と思いきや、突然(立つ→ )上がり、私に握手を求めてきた。
042)~ときたら/~ときては/~ときている
名詞 : × + ときたら ・
ときては
名詞 : × + ときている ・
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ>
【会話】
李 :小平ときたら、僕に叱られて、さっきまで泣いてたかと思ったら、もう笑ってるよ。
良子:とても立ち直りが早いのよ。悪く言えば気まぐれなのね。誰に似たのかしら?
李 :気まぐれさでは君にはかなわないよ。君ときたら、気まぐれな上に、わがままときている。
【解説】
「~ときたら/~ときては」は話題提示で、「~と言うと」(→文型210)、「~と言えば」(→文型217)や「~と言ったら」(⇔文型219)と同じく「~に関して語ると <≒は>」という意味を表しますが、相手に対する非難・批判・不満・怒りや、自分に向けられるときは自嘲などの感情を込めた表現を作るのが特徴です。
その助動詞用法が「~ときている」で、やはり、非難や・怒り・不満などの感情を強く含んでいる断定の助動詞「だ」に相当します。そのため会話では「~ときたら~ときている」のように使われることが多く、一緒に覚えた方が便利でしょう。
注意してほしいのは「~ときたら」と「~と言ったら」(⇔文型219)の用法上の違いですが、「そのおいしさと言ったら、ほっぺたがおちそうだった」のように、後件でいい事態を表すときは「~と言ったら」を使わなければなりません。→例題1)
【例文】
1.最近の新入社員ときたら、不平不満ばかり言って少しも働かない。
2.あいつときたら、何にでも口を挟みたがる。
3.あ~あ、俺ときたら、どうしてこんなに馬鹿なんだ。
4.最近の若者ときたら、目上に対する言葉の使い方ひとつ知らないときている。
5.うちの部長ときては、まったく融通の利かない石頭ときている。
【例題】
1) 彼(と言ったら/ときたら)口先(ばかりで/ばかりに)、自分の発言に責任をとった例しが(ある/ない)ときている。
2) この子( )きたら頭は悪い( )、おまけに愚図( )きている。
043)*~ところに/*~ところを
名詞 : の + ところに ・
動詞・イ形容詞: 普通形/ている形 ところを ・
【会話】
李 :あの地震は、明け方、住民がまだ眠っているところを襲ったんだそうだ。
良子:慌てて布団から飛び起きた人も多かったでしょうね。
李 :しばらくは大阪支社に電話しても通じなくてね。みんながやきもきしているところに、インターネット経由で現地の情報が入ってきたんだ。
【解説】
時や場面を表す「ところ」は「に/で/へ/を」など助詞と一緒に使われます。例えば、「~ところに」は「ちょうど~の時に」と同じ意味で、後件では「行く・来る・~がある・~が起こる」などが使われます。助詞は後ろに来る動詞によって決まります。
難しいのは「~ところを」の用法です。「AところをB」の用例のほとんどは、Aが進行中の場面で、それを中断する予想外の事態が発生したことを表すもので、逆説の「~のに」に近い用法になります。意味から言えば、「~時だったが、(運良く・運悪く・偶然・意外にも)~」や「~時なのに、~」を表すでしょう。よく使われる「~ところをすみません/~ところをありがとう/~ところを申し訳ありません」などは、そのまま慣用表現として覚えた方がいいでしょう。→例題2)
【例文】
1.いいところに来たね。ちょうど一杯やってたところだ。
2.私から連絡をとろうと思っているところに、ちょうど当人から電話がかかってきた。
3.人が話しているところに、口を挟まないでください。
4.お忙しいところを、わざわざお出向きいただき、誠にありがとうございました。
5.カンニングしようとしたところを、運悪く先生に見つかってしまった。
【例題】
1) 危ないところ(に/を)(助かって/助けて)いただき、お礼の(申す/申し)ようもございません。
2) あのう、お(話す→ )中のところ( )すみませんが、この近く( )公衆電話はないでしょうか。
044)Aとしたところで/としたって/にしたとことで/にしたってB
意味 AとしてもB. AにしてもB。 AでもB
045)~というのは/~とは ・
名詞 : × + というのは
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> とは
って<口>
((注:広く句と結びつく。口語形は全て「~って」となる)
【会話】
李 :仕事って先輩から盗むものだと教えられてきたけど、最近の新入社員は欲がないねえ。
山田:欲がないわけじゃあないよ。会社というのは給料をもらえばいい所で、生涯をかける所ではないんだよ。
真理:確かにそうね。でも、何に生涯をかけたらいいのかもわからないのが実状じゃないかしら。
【解説】
「~というのは」(口語形は「~って」)の用法は、大きく二つに分けることができます。ひとつは例文1、2のように物事や語の意味・内容を説明するもので、文末には「~ことだ/~意味だ/~略だ」などが多く現れます。これは「~とは」を使っても表せます。
しかし、「~とは」は断定的で、また驚き・失望・感嘆を伴うのが特徴なので、微妙な使い分けが生じます。例えば、例文3、4のように「~というのは」が伝聞内容を引用したり、例文5のように婉曲な言い回しのときは「~とは」が使えません。この婉曲表現の時は「~かもしれない/~ようだ/~でしょうか」などの推量表現が文末に現れることが多いでしょう。
なお、「~とは」には別の用法もあるので、「~とは」(→文型242 )も併せて参照してください。→例題1)
【例文】
1.週刊誌というのは(⇔とは)、週一回発行される雑誌のことだ。
2.「手紙」というのは(⇔とは)、中国語でトイレットペーパーという意味だってこと、君、知ってた?
3.この投資が危険だというのは(×とは)、何かわけがあってのことでしょうか。
4.李さんが学校を辞めるというのは(×とは)、本当ですか。
5.結婚というのは(×とは)、いわば恋愛の墓場のようなものですかねえ。
【例題】
1) 夢(とは/というのは)、心の中で思い描いている間(が/は)一番いい(の/こと)かもしれませんねえ。
2) あなたが(見る→ )という( )は、もしかしてUFOじゃないんです( )。
046)*~とは言え/*~とは言っても/~とは言うものの
名詞 : × / だ + とは言え
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> とは言っても
とは言うものの
とは言いながら
【会話】
李 :日本は島国だとは言っても、一万年以上前は大陸と地続きだったらしいから、日本人も元々は大陸の住人だったかもしれないよ。
良子:モンゴル語・朝鮮語・日本語は同一母語とも言われているから、そうかもしれないわ。
李 :とは言え、民族としては分化してるね。
【解説】
これらの文型は同一主語文で使われ、「Aであるとは言えるが、<実は/やはり/まだ>Bという問題がある」と、Aの内容は認めながら、いろいろ問題点や説明不足をBで付け足す表現です。異主語文では使えませんから、注意しましょう。
兄は成績が優秀だが(×とはいえ)、弟は劣等生だ。 <異主語>
兄は成績が優秀だが(・とはいえ)、少し協調性に欠ける。<同一主語>
「~とは言え」は中立的で、「~とは言っても」が一番逆接の語感が強いですが、どちらも文脈上「~けれども」「~ても」の両方の逆接を表すことがあります。一方、「~とはいうものの/~とはいいながら」は婉曲な言い回しで、「けれども」の逆接しか持っていません。→例題1)
【例文】
1.中国語ができるとは言っても、日常会話程度なんです。
2.いくら気丈だとは言え、やはり彼女は女ですからね。
3.駅から近いとは言え、歩けば二十分はかかります。
4.三月とは言うものの、北国の春はまだ遠い。
5.知らぬこととは言いながら、誠に失礼いたしました。どうか御容赦ください。
【例題】
1) (いくら/たとえ)刺身が好きだ(とは言っても/とは言いながら)、とてもこんなには(食べ切りません/食べ切れません)よ。
2) 男女雇用機会均等法が(制定した→ )とは言うものの、男女平等( )はまだほど遠いと(言う→ )ざるを得ません。
047)~と言わんばかり/~とばかり
名詞 : × / だ + と言わんばかりに ・
動詞・形容詞:普通形<ナ形ー×/だ> と言わんばかりの
とばかり(に)
とばかり思う ・
(注:広く句と結びつく。「~だ」は省略されないことが多い)
【会話】
百恵:最近の山口さん、どうしたの?何だか目が空ろで、おどおどしていて元気がないわね。
山田:本当だね。つい最近までは、もっと年俸を上げろとばかりにしゃにむに仕事をしていたのに。
李 :課長から会社を辞めろと言わんばかりに海外勤務を言い渡されたらしいよ。
【解説】
この文型中の「~んばかり」(→文型487)は動詞の「ない形」と結びついて、「今にも~しそうだ」と同じ意味を表します。
今にも泣き出しそうな顔 = 泣き出さんばかりの顔
ここから「~と言わんばかり」が生まれていますから、「今にも言いそうだ」、つまり、「(実際にはそう言っていないが)今にも~しそうな様子・態度・表情で」という意味を表します。「~とばかりに」はその省略形です。
注意してほしいのは、例文5のように「~とばかり思っていた」の形で前に来る語や句を強調する文型を作ることがあります。この「~とばかり」は省略しても意味は変わりません。形は同じでも、上の「~と(言わん)ばかり」とは全く異なる文型です。
【例文】
1.死ねと言わんばかりに(⇔とばかりに)殴りつけた。
2.顔も見たくないとばかりに(⇔と言わんばかりに)、彼女は顔を背けると、部屋を出て行った。
3.黙れと言わんばかりの(⇔とばかりの)顔で、彼は私をにらみつけた。
4.「いい気味だ。ざまを見ろ」とばかりに(⇔と言わんばかりに)、彼は私を笑った。
5.え?試験は今日なの?僕は明日だとばかり思っていたよ。
【例題】
1) 最初(は/に)冗談で言ってる(とばかり/と言わんばかり)思っ(ている/ていた)が、実は彼は本気だった。
2) 彼はそれを口に入れるか(入れる→ )うちに、まずい( )ばかり( )吐き出した。
048)~と(も)なく/~と(も)なしに
疑問詞(+格助詞): × + と(も)なく
動詞 :原形 と(も)なしに
【会話】
良子:近所に中国帰国者の方が引っ越してきたの。
李 :言葉で困ってるだろうなあ。
良子:ええ、でも子供たちって二カ月もしないうちに話せるようになって、今では親の通訳をしてるんだって。
李 :子供というのは、語学の天才だね。誰から習うともなく言葉を覚えてしまうんだから。
【解説】
「~と(も)なく/~と(も)なしに」は疑問詞(疑問詞+助詞)につくときは、「<いつ・どこで・誰が・何を>かよくわからないが、~」という不確かさを表します。また、感覚・知覚・思惟などを表す動詞 を反復し、「見るともなく見る/聞くともなく聞く」のように「~しようというつもりはなく、ただ、なんとなく~する」という無意識で行われた動作を表します。日本語の不作為・無意識の行為を表す代表がこの「~ともなく/~ともなしに」だと言えるでしょう。
【例文】
1.彼は夕焼けの空を見るともなく、ただぼんやりと見つめていた。
2.電車の中で聞くともなしに隣の女子高校生たちの話を聞いていたが、余りのどぎつさに唖然とした。
3.読むともなく週刊誌をめくっていると、なんと昔なじみのA君のことが載っているではないか。
4.どこからともなくいい匂いがしてきた。
5.誰言うとなく、彼のことを阿Qと呼ぶようになった。
【例題】
1) (聴く/聴いた)ともなしに(聴いた/聴いていた)有線放送から、昔懐かしい歌が(流して/流れて)きた。
2) 彼は誰に語る( )もなく「さようなら」とつぶやく( )、まるで風の(如し→ )、どこ( )ともなく去って行った。
049)~と(も)なると/~と(も)なっては
名詞 : × + と(も)なると
動詞・形容詞:普通形 <ナ形ー×> と(も)なれば
と(も)なっては~ない
【会話】
課長:年末ともなると、何かと気ぜわしいな。ボーナスもいいけど、右から左へ飛んでいくだけだしなあ。
真理:でも、課長ともなれば、ボーナスもドカンと出るんでしょう。羨ましいですわ。
課長:家のローンもあるし、この歳ともなると老後の心配もしないわけにはいかないし、楽じゃないんだよ。
【解説】
「~と(も)なると/~と(も)なれば」は「~という状況・場合になると」という意味を表し、後件でどんな結論になるかを述べます。「~と(も)なると」は当然の結果という気持ちが現れます。一方、「~と(も)なれば」には推量の気持ちが含まれていて、文末で「~だろう」などの推量の表現が多く現れます。
「と(も)なっては~ない」は例文4、5のように常に後件で良くない結果になることを強調するのが特徴で、文末で否定形か否定の意味を表す語と呼応します。失望、残念といった感情が強く現れる表現でしょう。→例題1)
【例文】
1.ゴールデンウイークともなると、観光地は人で溢れる。
2.安楽死問題ともなれば、様々な問題があり、一朝一夕に答えは出せません。
3.口では勇ましいことを言っていながら、いざ実行となると、しり込みしてしまう者が続出する始末だ。
4.今となっては、もう手の打ちようがないですねえ。
5.校内暴力もこれほどとなっては、もはや教師だけでは手に負えません。
【例題】
1) 彼は人には面倒な仕事を(する/させる)くせに、いざ自分がやる(となると/となっては)(嫌だ/嫌がる)。
2) 現代医学( )もってしても(治せる→ )難病とも( )( )と、ご両親の心痛は察するに余りある。
050)*~ないではおかない/*~ずにはおかない
動詞:[ない]形 + ないではおかない
ずにはおかない
【会話】
良子:お隣の奥さんって凄いわよ。小二の子どもを毎晩十時まで勉強させないではおかないらしいのよ。
李 :お前だって大したものさ。毎晩疲れて帰って来る俺に、家事を手伝わせずにはおかないじやないか。
良子:もしそんなことを外で言ったら、ただじゃおかないわよ。帰って来る家はないと思いなさい。
【解説】
「~ないではおかない/~ずにはおかない」は動作動詞に付くと、例文1、2のように「~しなければ、自分の気が済まない/必ず~てやる」という強い決意を表します。また、心理・感情を表す動詞に付くと、例文3~5のように「必然的に/思わず~させてしまう」という自然・自発の感情を表します。
この文型は動詞の使役形と結びつくことも多く、強制的に或いは自然にある状況・心理状態に追い込むことを表します。その場合、「~ないではいられない/~ずにはいられない」(→文型261)と主語が好対照の文型になります。
その映画は私を感動させずにはおかなかった。(映画は・私)
私はその映画に感動せずにはいられなかった。(私は・映画)
【例文】
1.あいつは生意気な奴だ。一度、あいつの鼻っ柱をへし折ってやらないではおかない。
2.彼らがこのような内政干渉をつづけるなら、我々はいかなる手段をもってしても、撃退せずにはおかない。
3.大臣のその一言は、波紋を呼ばずにはおかなかった。
4.彼の言動は、私を不安にさせずにはおかなかった。
5.その子の学校に対する抗議自殺は、大人達を反省させずにはおかなかった。
【例題】
1) A紙が我々に根も葉もない中傷を加えた(以上/からこそ)、謝罪(しない/させない)では(いられない/おかない)。
2) 彼女の献身的( )母親を看護する姿は、見る人を(感動する→ )ずには(おく→ )。
没有评论:
发表评论